会長就任のあいさつ

このたび第29期関西農業食料工学会会長に就任した野口良造(京都大学)です。任期は2025年度~2026年度の二年間となります。よろしくお願いいたします。

関西農業食料工学会は,大学の教員や学生,研究機関の研究員,企業の技術者を中心とする約350名の会員で構成されています。特に,農業機械業界をリードする企業様にも団体会員として多大なご支援とご協力を頂いており感謝申し上げます。

今期の運営体制は,常務幹事に宮坂寿郎先生(京都大学),企画委員長に今泉鉄平先生(岐阜大学),編集委員長に滝沢憲治先生(三重大学),表彰委員長に福島崇志先生(三重大学),情報委員長に難波和彦先生(岡山大学)がそれぞれご就任いただきました。これからの関西農業食料工学会の活性化が強く期待されます。

関西農業食料工学会が関与する農業食料工学分野(科研費の細目「農業環境・情報工学」に主に該当)は,工学的手法の応用が中心であり,農学分野の中でも生物を直接取り扱わないという理由から,農学分野においてややマイナーな立場としての側面がありました。しかし現在では,日本の食料生産を維持,増産,安定化させるためは,農業食料工学分野の発展はますます必要不可欠であり,センサ技術,ロボティクス,AI,IoTなどを活用したスマート農業の展開によって,我々の分野は,農学分野の他の専門領域だけでなく工学分野などを巻き込む大きな流れの中心的役割を担っています。

本学会は,研究成果の発表や共有の場だけでなく,次世代の農業食料工学分野で活躍が期待される学生や若手研究者の教育と育成の場として重要な使命を担っています。新たな技術や価値観が日々生まれる今こそ,若い世代が自由に発想し,学び合い,実践と連携できる環境づくりが大切です。一方で,近年では,ChatGPTをはじめとした生成AIの普及により,文献調査や執筆,分析などの効率が飛躍的に向上しています。一方で,剽窃や誤情報,情報の真正性といった新たな課題も顕在化しており,学会としても倫理的,実務的な観点からも対応を検討すべき段階にあると考えます。

最近はコロナ禍もすっかり過去のものとなり,対面での大会運営が基本となりました。パソコンやスマホから大量の情報の入手が可能となっている中で,わざわざ時間とコストをかけて対面で行う意味がどこにあるのかを考えると,やはり参加者同士がアナログで直接刺激し合い新しい着想を得る「セレンディピティ"serendipity"」を得る喜びのためと考えています。コロナ禍ではオンラインの学会が国内外で数多く開催されましたが,ほとんど記憶に残らず,そこで新たな着想を得ることが難しかったと考えられます。情報化が進んだ今だからこそ,記録だけでなく記憶や喜びが残る学会運営に繋げていきたいと考えております。

関西農業食料工学会会員の皆様からのご協力とご支援をお願い申し上げます。

                                                      

令和7年4月1日

京都大学大学院農学研究科  野口 良造